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難治性うつに対する治療概要反復経頭蓋磁気刺激療法 #3

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“治療抵抗性うつ病に対する治療法として、軽症であれば認知行動療法などの心理療法、…長年、精神科外来に通院し、抗うつ薬を処方されているにもかかわらず、うつ症状がなかなか改善しない場合は経頭蓋磁気刺激(transcranial magnetic stimulation: TMS)療法があります。”

# 反復経頭蓋磁気刺激(repetitive TMS: rTMS)療法とはどのような治療法なのでしょうか?

rTMS療法とは、頭の前方を特殊なコイルを用いて、外部から非侵襲的に電磁気学的に刺激する治療法のことを指します。TMSからの磁場は、刺激用コイルに短時間、交流電流を流すことによって生成され、さらにその磁場が瞬間的に変動することで微弱な渦電流が誘導されます。TMSで生成された磁場は、頭皮や頭蓋骨に対して安全かつ無痛性に貫通し、脳の特定領域に微弱な電流を誘導することができます。ただし、頭部には前頭筋や眼瞼筋および側頭筋などがあるため、TMS刺激によってそれらの筋肉群が二次的に収縮し、軽度の痛みを感じることがあります。

rTMS療法は覚醒下で実施することが可能であり、麻酔の必要はなく、専門家の管理のもと適切な使い方をすれば、非常に安全な治療技術です。したがって、適応があれば、外来でも入院でも実施可能です。電気けいれん療法のように、施術直後にリカバリー室などで安静を保つ必要もなく、施術後直ぐに自動車の運転を含め、通常の日常生活に戻ることが可能です。典型的な治療期間は約4~6週間となります。

野田 賀大

野田 賀大

著者サイト

https://scholar.google.com/citations?user=9xekxcEAAAAJ&hl=ja&oi=ao

肩書

MD, PhD

所属

慶應義塾大学精神・神経科、Multidisciplinary Translational Research Lab

紹介文

野田賀大先生は東京大学医学部附属病院で研修ののちトロント大学精神科Centre for Addiction and Mental Health・Temerty Centre for Therapeutic Brain Interventionにて、日本人初の精神科研究医として、数年間に亘る本格的なクリニカルリサーチのトレーニングを積まれました。精神科研究医に加えて、そこではrTMS/TMS-EEGの他、Deep TMS、MSTをはじめとしたニューロモデュレーション研究も実施されました。帰国後は、慶應義塾大学精神・神経科でrTMSをはじめとした研究を主導されています。rTMSについて不確かな情報の提供や不適切な治療的介入が行われることが多いので、日本のTMSの第一人者である野田賀大先生にTMSについて教えていただきました。