専門家による記事
ADHD治療のエビデンスと小児精神医学研究の行末 #2
“the pharmacologic treatment and behavioral parent training should be complementary”
#ADHDに対して非薬物療法的な治療のエビデンスはありますか?
過去10年間前後で、ADHDに対する非薬物療法について多くのエビデンスを学びました。特にヨーロッパADHDガイドライングループによる質の高いメタ分析の貢献が大きいです。このグループが示したことは、ペアレントトレーニング・認知トレーニング・ニューロフィードバック・食事療法はランダム化比較試験でADHDの中核症状(つまり不注意、過活動、衝動性)に対して効果的であるものの、その効果はブラインドではない評価者が行った方が明確でブラインド評価者が評価するとほとんど差がなくなる場合もあると言うことです。しかし、ブラインド評価であっても、ペアレントトレーニングはADHDにしばしば関連する問題、例えば反抗挑戦性障害や行為障害、および子育てに対しては効果があります。したがって、薬物療法とペアレントトレーニングは水と油の関係ではなく、補完し合うべきなのです。
#現在の精神科あるいは心理学領域の研究の一般的な限界はなんだと思います。
次の二つだと思います。
・再現性の欠如:異種性・被験者数が少ないこと、そして解析手法を柔軟に変更してしまうためと考えています。
・個人ではなくグループレベルでの結果にフォーカスしていること
#どのような研究が発達障害で面白いと思われますか?
上記の二つの限界にアプローチするために、重要な道のりは予後の予測や治療結果への反応性の予測を個人レベルで行うことだと思います。そのためにはとても大きな被験者数のデータを使い、異なる研究モダリティとデザインを融合する必要があるかもしれません。
Samuele Cortese
著者サイト
https://scholar.google.com/citations?user=BnSg4BEAAAAJ&hl=en
肩書
Professor, MD, PhD
所属
the University of Southampton, Department of Psychology, Child and Adolescent Psychiatry
紹介文
Cortese先生はイタリアのVerona大学医学部をスンマ・クム・ラウデ(成績最上位)で卒業し、同大学での小児精神科研修を同じくスンマ・クム・ラウデで修了しています。パリの病院で研修後、Verona大学大学院でマルチ画像の研究を行い、卒業時にはDoctor Europaeusも授与されました。その後はマリーキュリーフェローシップを獲得し、ニューヨーク大学でADHDの脳画像研究を行いました。その後は英国Southampton大学で発達障害の臨床と研究に従事されています。今年は外部機関により過去10年間において世界で2番目にADHD研究に貢献した人物と認定されています。今回は世界的なADHD研究の権威であるCortese先生にお話をお伺いしました。