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精神疾患とスティグマ #4

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“スティグマの難しいところは、本質的な問題が自分自身ではなく、社会構造の内部や他者の内面にあるところです”

#スティグマを向けられた時、私たちはどうしたらいいでしょうか?

もし、私自身が精神疾患をもち、私自身にスティグマを向けられたときにどのように対処するとよいのでしょうか?この答えはとても難しいですが、私が自分自身でできることは、そのような場を離れることだと思います。スティグマの難しいところは、本質的な問題が自分自身ではなく、社会構造の内部や他者の内面にあるところです。よって、スティグマを向けられた個人が独力で解決することは難しいことが多いと思います。この構造はいじめと共通するところもあるかもしれません。

逆に私にとっての大切な誰かが、精神疾患を持ってスティグマを向けられたときはどうでしょうか?そのような時、私は「精神疾患を持つことは珍しいことではない」と伝えるかもしれませんし、「一緒にご飯を食べに行こう!」というかもしれません。あるいは一緒に病院に行くかもしれません。他の疾患に患った時と同様に相手を心配しますし、それまでの関係も継続します。つまり、特別なことはしないと思います。もちろん、精神疾患の症状が悪い時(例えば、極度のうつ症状で家から出られない)は、いつものように接することができないこともあるかもしれません。それでも「いつでも連絡して」と伝えてみたり、たまに「元気?」とLINEを送ってみたりするかもしれません。言い換えると、大切な誰かが精神疾患を持って、スティグの対象となった時、私たちはその人が「一人じゃない(孤独じゃない)」と感じることができるようにちょっとだけ支えることが重要な気がします。

山口 創生

山口 創生

著者サイト

肩書

博士(社会福祉学)

所属

国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所

紹介文

山口先生は大阪府立大学社会福祉学研究科在学中にキングス・カレッジ・ロンドン精神医学・心理学・神経科学研究所に留学されました。帰国後に大阪府立大学社会福祉学研究科卒業され、その後は国立精神・神経医療研究センターで精神疾患に対するスティグマについて研究されています。2016年からはこころのバリアフリー研究会の評議員、2018年からは日本精神障害者リハビリテーション学会の理事も務められています。今回は山口先生がスティグマについてRestbestに語ってくれました。