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自分の感情・行動をコントロールする(自己制御) #2

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「マインドフルネスに基づく介入は内受容を介して感情制御の最も効果的な手段である」

# 台湾の精神科医療体制について教えてください。もしあれば、問題点も教えてください。

具体的には、日本の場合、脱施設化に向かっていますが、依然として一人当たりの精神科入院ベッド数は世界で最も大きい国の一つです。中には病院に住んでいる人もいます。地域精神医療はまだ始まったばかりなのです。しかし、入院中であっても実は自由に買い物に行ったり食事に行ったりすることができるという一面もあります。私も英国やイタリアで地域精神医療を学んだ精神科医として、西洋諸国の入院と日本での入院は意味合いが違うと実感しています。台湾では入院や精神科医療について問題があれば教えてください。

台湾は国民皆保険制度のために、台湾の精神科外来は世界で最もアクセスしやすいと誇ることができるでしょう。皆保険に登録されている場合、電話かウェブサイトで予約して数時間後に外来で診察を受けることができる人がほとんどです。そのため、一次レベルのクリニックや病院のたくさんの精神科医が20分間患者と話しただけで診断をつけ臨床方針を決定しなければならないという状況に強いられています。このシステムはアクセス性という意味では優れていますが、幾分かは医療の質を犠牲にしているかもしれません。入院システムに関しては、入院が必要と考えられる人の数とベッドの数のバランスが取れています。慢性病棟に関しても同様です。これは入院に伴う医療費の大半が皆保険により支払われるというところが大きいため、患者は入院費を支払うことができるからといえます。同時に、慢性期、亜急性期、急性期病棟を持つことのコストと利益を病院経営者が正確に計算できれば貢献利益を上げることができるということです。皆保険と貢献利益を上げることができることが、台湾の精神病院が十分に供給されていることを部分的には説明するでしょう。さらに、もう一つ台湾の精神科病院の需要と供給のバランスに貢献する要因があります。それは、皆保険により不適切であっても償還されるため医療費が比較的安くなるために、家族や社会に由来する問題を医療に持ち込むという傾向が政府、教育システム、そして家族にすら見られるのです。そのため、台湾で慢性病棟に入院している人のいくらかは、実際のところは脱施設化が可能で半分独立した状態で地域で生活することができるのです。しかし、台湾には地域でこういった人達を受け入れる適切な場所がないために入院を強いられているといえます。同様に、警察も医療も同じ社会セーフティに帰属することも問題と言えます。もし他殺事件があれば、台湾政府は精神科医療システムの責任を増やし、より安全な社会を構築しようとします。このような政策は、若い世代の精神科医たちを第二次・第三次レベルで外来機能しか持たない病院を毛嫌いさせます。まとめると、今は台湾の精神科病院のハード面は依然として十分ですが、ソフト面では人的ソース、特に精神科医で入院医療を提供できる人の数が数年後には不足するかもしれません。それは、不適切な仕事負荷、責任の押し付け、そして医療費の償還によるとおもいます。

Hsiang-Yuan Lin (林祥源)

Hsiang-Yuan Lin (林祥源)

著者サイト

https://scholar.google.co.uk/citations?user=QqQ-HVQAAAAJ&hl=en

肩書

MD

所属

トロント大学精神科

紹介文

Hsiang-Yuan Lin先生は国立台湾大学を卒業後、Molecular Psychiatry誌をはじめとした精神科トップジャーナルで論文を発表されています。現在はトロント大学精神科で臨床科学者として勤務されています。ご専門は発達障害当事者の脳画像ですが、特に薬物介入やRDoC的アプローチを取られていることで知られています。今回はLin先生が関心のある自己制御を中心にインタビューに答えていただきました。また隣国ということもあり台湾と日本の医療システムの違いについても話していただきました。