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難治性うつに対する治療概要反復経頭蓋磁気刺激療法 #5

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“治療抵抗性うつ病に対する治療法として、軽症であれば認知行動療法などの心理療法、…長年、精神科外来に通院し、抗うつ薬を処方されているにもかかわらず、うつ症状がなかなか改善しない場合は経頭蓋磁気刺激(transcranial magnetic stimulation: TMS)療法があります。”

# rTMS療法の適応と副作用について教えてください。

rTMSの保険適応は、1剤以上の抗うつ薬に反応しなかったうつ病で、かつ施設基準を満たした病院のみで実施可能です。このように、rTMSの保険適応には縛りが多いのです。さらに、rTMS療法は誰でも受けられる治療法ではなく、以下に該当するケースは、原則rTMS療法の適応にはなりません。1)てんかんやけいれん発作の既往歴がある方、2)頭蓋内に金属製の医療機器(クリップ、インプラント、デバイス)が埋め込まれている方、3)過去3~6ヶ月以内に薬物乱用の既往歴のある方、4)病状が不安定である方、5)妊娠している方、などです。

rTMS療法の副作用は、一般的に軽度から中等度のものが多く、個々のセッション後すぐに改善し、セッションを重ねるごとに減少することが多いです。典型的な副作用には以下のものが挙げられます。1)頭痛、2)刺激部位の頭皮の違和感、3)顔の筋肉の収縮による違和感。非常に稀ですが、重篤な副作用として、4)けいれん発作、5)躁転(双極性障害に多い)、6)TMSのクリック音による聴力障害、などが知られております。

野田 賀大

野田 賀大

著者サイト

https://scholar.google.com/citations?user=9xekxcEAAAAJ&hl=ja&oi=ao

肩書

MD, PhD

所属

慶應義塾大学精神・神経科、Multidisciplinary Translational Research Lab

紹介文

野田賀大先生は東京大学医学部附属病院で研修ののちトロント大学精神科Centre for Addiction and Mental Health・Temerty Centre for Therapeutic Brain Interventionにて、日本人初の精神科研究医として、数年間に亘る本格的なクリニカルリサーチのトレーニングを積まれました。精神科研究医に加えて、そこではrTMS/TMS-EEGの他、Deep TMS、MSTをはじめとしたニューロモデュレーション研究も実施されました。帰国後は、慶應義塾大学精神・神経科でrTMSをはじめとした研究を主導されています。rTMSについて不確かな情報の提供や不適切な治療的介入が行われることが多いので、日本のTMSの第一人者である野田賀大先生にTMSについて教えていただきました。