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難治性うつに対する治療概要反復経頭蓋磁気刺激療法 #1

“治療抵抗性うつ病に対する治療法として、軽症であれば認知行動療法などの心理療法、…長年、精神科外来に通院し、抗うつ薬を処方されているにもかかわらず、うつ症状がなかなか改善しない場合は経頭蓋磁気刺激(transcranial magnetic stimulation: TMS)療法があります。”

# 治療抵抗性うつ病とはどのような病態を指すのか教えてください。

治療抵抗性うつ病とは、一定期間、適切な抗うつ薬治療を実施しても、十分な治療効果が得られないうつ病のことを指します。具体的には、少なくとも2~3か月間以上、抗うつ薬を2種類以上試しても、良好な反応が見られない症例を指すことが多いです。そのような症例に対しては、うつ病の重症度が軽度であれば、認知行動療法をはじめとした心理療法、重症であれば、入院による電気けいれん療法などが適応になることがあります。

しかしながら、治療抵抗性うつ病に関する精神科臨床上の問題として、治療抵抗例と考えられている患者の多くが、実際には、抗うつ薬の用量・期間・服薬遵守の観点において不十分であり、うつ病に対する適切な薬物療法を受けていなかったり、あるいは、他の精神疾患(例えば、発達障害、適応障害など)に伴う「うつ状態」に対して、うつ病と誤診されていたりするケースもしばしばあります。

したがって、治療抵抗性うつ病に関する診断および治療方針については、そもそもの前提として、うつ病における「治療抵抗性」が精神科臨床的にどのような性質のものなのかをきちんと見極める必要があります。そういった意味において、治療抵抗性うつ病を適切に診断することは臨床上、極めて重要になってきます。

野田 賀大

野田 賀大

著者サイト

https://scholar.google.com/citations?user=9xekxcEAAAAJ&hl=ja&oi=ao

肩書

MD, PhD

所属

慶應義塾大学精神・神経科、Multidisciplinary Translational Research Lab

紹介文

野田賀大先生は東京大学医学部附属病院で研修ののちトロント大学精神科Centre for Addiction and Mental Health・Temerty Centre for Therapeutic Brain Interventionにて、日本人初の精神科研究医として、数年間に亘る本格的なクリニカルリサーチのトレーニングを積まれました。精神科研究医に加えて、そこではrTMS/TMS-EEGの他、Deep TMS、MSTをはじめとしたニューロモデュレーション研究も実施されました。帰国後は、慶應義塾大学精神・神経科でrTMSをはじめとした研究を主導されています。rTMSについて不確かな情報の提供や不適切な治療的介入が行われることが多いので、日本のTMSの第一人者である野田賀大先生にTMSについて教えていただきました。