専門家による記事

ADHD治療のエビデンスと小児精神医学研究の行末 #1

“the pharmacologic treatment and behavioral parent training should be complementary”

#コルテーゼ先生のこれまでのキャリアについて聞かせてください。

私はイタリアにあるヴェローナ大学の医学部を卒業し小児思春期精神神経科の専門プログラムを修めました。次に、私は”Chef de Clinique”(概ね、臨床助教と同格です)としてフランスのパリで働きました。フランスのトュールで1年間一般医業務を行ったのち、マリーキュリー博士研究員フェローシップを受けニューヨーク大学で博士研究員を行いました。その時の専門は小児思春期精神科に脳画像を適応したものです。その後、英国に移り、そこで小児思春期精神科の専門医として勤務しています。准教授となり、昨年には教授に就任しました。このように、私は、臨床と教育そして研究を組み合わせようとしてきました。それなりに骨の折れる仕事ですが、同時にとても刺激的です。

主な研究の興味は発達障害で、特にADHDにフォーカスしています。査読雑誌に200以上の論文を発表しています。その中には、New England Journal of Medicine, Lancet Psychiatry, American Journal of Psychiatryといったトップジャーナルでの筆頭著者を含みます。他にも、Journal of the American Academy of Child and Adolescent Psychiatryの副編集長であり他にも5つの国際的な雑誌の編集委員を務めています。私はヨーロッパADHDガイドライングループ、欧州神経精神薬理学の小児思春期精神科部門、British Association of Psychopharmacologyの小児思春期精神科のメンバーです。

2020年には、Web of Scienceにおいて過去10年間で最も影響力のあった研究者のリストに含まれ、ADHDの専門家では世界2位にランクされました。

#発達障害の異種性についてどうお考えですか?(注:異種性とは、同じ診断でも遺伝子・脳・症状が大きく異なること)

これは非常に興味深い問題です。なぜなら、私たち医師は臨床現場で明らかな異種性を観察し、患者の管理や研究への影響、そして研究結果を一般化する際に重要な示唆となるためです。ある意味でこれは驚くようなことではありません。なぜなら、現在の診断基準は臨床家の間でのコミュニケーションを容易にするためのツールであり、病因や病態生理に基づいたものではないからです。

 

Samuele Cortese

Samuele Cortese

著者サイト

https://scholar.google.com/citations?user=BnSg4BEAAAAJ&hl=en

肩書

Professor, MD, PhD

所属

the University of Southampton, Department of Psychology, Child and Adolescent Psychiatry

紹介文

Cortese先生はイタリアのVerona大学医学部をスンマ・クム・ラウデ(成績最上位)で卒業し、同大学での小児精神科研修を同じくスンマ・クム・ラウデで修了しています。パリの病院で研修後、Verona大学大学院でマルチ画像の研究を行い、卒業時にはDoctor Europaeusも授与されました。その後はマリーキュリーフェローシップを獲得し、ニューヨーク大学でADHDの脳画像研究を行いました。その後は英国Southampton大学で発達障害の臨床と研究に従事されています。今年は外部機関により過去10年間において世界で2番目にADHD研究に貢献した人物と認定されています。今回は世界的なADHD研究の権威であるCortese先生にお話をお伺いしました。